2段階晶析法の研究
研究概要
この研究では、滴下冷却晶析の研究と同様に、粒径や形状のそろった結晶製品を生産するための晶析操作法と操作設計式の開発を目的としています。粒のそろった結晶製品を生産するための工学的指針のひとつに、東北大学の研究グループが提唱した「核発生期と成長期の分離」があります。通常の回分晶析操作では、結晶核個々の発生時機にバラツキがあることから、核発生直後から操作終了までの成長時間にもバラツキが発生します。これらの現象は、最終の結晶粒径にも反映されます。理想的なのは、操作中のある時点で結晶核の発生が一斉に開始され、同時に完了することです。そうすると、すべての結晶にとって成長時間はみな同じになりますので、最終粒径も等しくなります。種晶が添加される場合は、添加した時点で核発生終了とみなせますので、あとは後発の核発生を抑止できれば上記の指針を満たしたことになります。
私たちの研究室では、滴下冷却晶析の研究と同様に、種晶添加が敬遠される場合を想定しており、内部種晶生成に基づく操作法を検討しています。これまでに、内部種晶の核発生工程と成長工程とに分けて晶析操作を行う「2段階晶析法」を考案しました[岡村2013]。本法では、最初の核発生工程で内部種晶となる結晶核を大量発生させた後、結晶と液をいったん熟成して落ち着かせます。続く成長工程では内部種晶をなるべく緩やかに成長させます。そうすることで、内部種晶の均質性が維持された結晶製品を生産することができます。しかし、装置本体を冷却することで原料溶液に熱を伝える従来からの「回分冷却法」の場合、冷却速度があまり大きく取れないことから内部種晶の発生個数が十分ではなく、従来課題である後発の結晶核発生の抑止は困難でした。この問題点を克服するための改善策として、高過飽和を利用できる貧溶媒晶析法[五十嵐2016,川崎2018]や反応晶析法[野村2017,小野2017]を核発生工程に用いることを試みています。
図 2段階晶析法の概念と反応晶析法によるカリミョウバン結晶[野村2017]
(写真左は保持工程後の内部種晶、右は成長工程後の製品結晶)
卒業論文
【修士論文】川崎 高弘「内部種晶工程を設けた非線形回分冷却晶析法の開発」(2018)
【修士論文】野村 連「反応晶析法を用いたカリミョウバン単分散結晶の製造」(2017)
【修士論文】五十嵐 雄太「カリミョウバンの2段階晶析における核化工程の検討」(2016)
【卒業論文】小野 南椰子「カリミョウバンの反応晶析における原料供給法の検討」(2017)
【卒業論文】岡村 朋美「カリミョウバンの二階冷却晶析における結晶個数挙動」(2013)
研究業績
【学会発表】川崎 高弘, 三上 貴司「カリミョウバンの非線形回分冷却晶析における粒径分布挙動」化学工学会室蘭大会(2018)学生奨励賞受賞
【学会発表】野村 連, 三上 貴司「カリミョウバンの反応晶析における粒径分布挙動」化学工学会東京大会(2017)学生奨励賞受賞
【学会発表】五十嵐 雄太, 三上 貴司「回分冷却晶析工程における過飽和計測法の開発」化学工学会群馬大会(2015)学生奨励賞受賞
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