新潟大学工学部 晶析工学研究室

滴下冷却晶析法の研究


 研究概要

 この研究では、粒径や形状のそろった結晶製品を生産するための晶析操作法と操作設計式の開発を目的としています。工業的な晶析操作では、原料溶液を冷却や蒸発するなどして過飽和状態とし、種晶を成長させることで結晶製品を生産します。種晶の粒径や形状は事前にそろえておくので、種晶だけを成長させることができれば、粒のそろった良質な結晶製品を生産することができます。しかし、多くの場合、操作の途中で微小な結晶核が溶液中から自然発生するため、種晶由来の大粒径結晶と自然発生由来の小粒径結晶が混ざった粗悪な状態で最終製品となります。さらには、自然発生した結晶核の成長に原料が消費されるため、種晶が当初計画した粒径にまで成長しません。これらの問題を回避するための有力な手段のひとつに、岩手大学の研究グループが考案したカリミョウバン-水系の回分冷却晶析における「シーディング法」があります。この方法は、大量の種結晶を原料溶液に添加するというものであり、種晶と原料溶液が触れ合う面積を大きく取ることで、溶液中の原料をなるべく種晶の側へ行かせる(種晶に届かなかった原料が結晶核発生の元になるので、それを取り除く)、という考え方に基づいています。
 シーディング法は、有力かつ簡便な手段ですが、医薬品や食品の分野では、種晶の利用がはばかられる場合もあります。というのも、用いる種晶の中に不純物成分が含まれているかもしれず、操作前の段階でそのリスクを完全に拭い去ることはできません。このような場合は、シーディング法(種晶)を用いることが難しくなります。種晶を用いない場合は、自然発生させた結晶核を「内部種晶」とみなし、これを成長させて最終製品とします。シーディング法の考え方にならえば、大量の内部種晶を発生させ、内部種晶と原料溶液の接触面積をなるべく大きくとることが推奨されます。私たちの研究グループは、大量の内部種晶生成を実現するための冷却晶析法として、高温の原料溶液を低温の原料溶液に添加する「滴下冷却晶析法」を考案しました[太田2012,鈴木2013,齋藤2014,海津2015]。本法は、装置本体を徐冷する従来の「回分冷却法」とは異なり、温度差のある原料溶液を直に接触させて急冷するものであり、従来法よりも結晶核の個数増大が見込める仕様になっています。また、原料溶液の添加条件で過飽和度を操作するため、従来法よりも細やかな過飽和操作を実現しやすい仕様になっています。これまでに、原料供給ノズルの材質や本数[三浦2017,佐々木2017]、内部種晶量[斎藤2018]、核発生後の熟成工程におけるさし水供給[渡辺2017,長谷川2018]、が粒径均一化に対して効果的であることを見出しています。上記既往成果の積み重ねにより、原料溶液の適切な添加条件を与える設計計算式[春田2019]や、粒径均一化に必要な内部種晶量を与える設計計算式[五十嵐2021]を見出しつつあります。


図1 滴下冷却法の概略図


図2 滴下冷却法で得られるカリミョウバン結晶[海津2015]


卒業論文

※印は、鶴岡工業高等専門学校(旧)晶析工学研究室におけるもの
【修士論文】五十嵐 紀亮「カリミョウバンの滴下冷却晶析における種晶添加条件の検討」(2021)
【修士論文】春田 拓也「カリミョウバンの滴下冷却晶析における理論滴下条件の検討」(2019)
【修士論文】長谷川 直人「カリミョウバンの滴下冷却晶析における希釈水添加操作の影響」(2018)
【修士論文】佐々木 数馬「内部シーディング法に基づく滴下冷却晶析技術の開発」(2017)
【修士論文】海津 里佳「滴下冷却晶析法を用いたカリミョウバン結晶の製造」(2015)
【卒業論文】斎藤 ふみ「カリミョウバンの滴下冷却晶析における結晶懸濁密度が粒径分布に及ぼす影響」(2018)
【卒業論文】渡辺 豪「カリミョウバンの滴下冷却晶析における希釈水添加条件の検討」(2017)
【卒業論文】三浦 和也「カリミョウバンの滴下冷却晶析における原料供給管内流動の影響」(2017)
【卒業論文】齋藤 哲「滴下冷却晶析法を用いたカリミョウバン単分散結晶の製造」(2014)
【専攻科論文※】鈴木 錬「新しい冷却晶析法に基づく単分散結晶の創製」(2013)
【卒業論文※】太田 優輝「滴下冷却法を用いたカリミョウバン単分散結晶の製造」(2012)


研究業績

※印は、鶴岡工業高等専門学校(旧)晶析工学研究室におけるもの
【学術論文】T. Mikami and R. Kaizu: Influence of Feed Condition on Crystal Size Distribution of Potassium Alum Obtained by Unseeded Two-stage Semi-batch Cooling Crystallization, J. Chem. Eng. Japan, 52/3, 317-324 (2019)Editor's Choice採択
【学術論文】T. Mikami, R. Kaizu and T. Saito: Influence of Feed Condition on Crystal Size Distribution of Potassium Alum Obtained by Unseeded Semi-batch Cooling Crystallization, J. Chem. Eng. Japan, 51/5, 454-459 (2018)
【学会発表】三上 貴司, 五十嵐 紀亮, 長谷川 直人, 海津 里佳「現象理解に基づく晶析操作設計」化学工学会新潟大会(2022)
【学会発表】五十嵐 紀亮, 三上 貴司「カリミョウバンの滴下冷却晶析における種晶添加条件の検討」化学工学会第87年会(2022)
【学会発表】三上 貴司, 春田 拓也「カリミョウバンの滴下冷却晶析における滴下条件式の検討」化学工学会第51回秋季大会(2020)
【学会発表】T. Mikami, N. Hasegawa, K. Sasaki and R. Kaizu: Semi-batch cooling crystallization of potassium alum by internal seeding method, 18th Asian Pacific Confederation of Chemical Engineering Congress (APCChE 2019), PD206 (2019)
【学会発表】春田 拓也, 三上 貴司「種晶無添加系におけるカリミョウバンの二段滴下冷却晶析」化学工学会横浜大会(2019)
【学会発表】三上 貴司, 長谷川 直人「カリミョウバンの滴下冷却晶析における差し水添加操作の影響」分離技術会年会(2019)
【学会発表】三上 貴司, 長谷川 直人, 佐々木 数馬, 海津 里佳「カリミョウバンの2段滴下冷却晶析における粒径分布挙動」化学工学会第84年会(2019)
【学会発表】長谷川 直人, 三上 貴司「カリミョウバンの滴下冷却晶析における希釈水添加の影響」化学工学会室蘭大会(2018)
【学会発表】三上 貴司, 海津 里佳, 佐々木 数馬「半回分冷却法を用いたカリミョウバン晶析における溶質供給条件」化学工学会第82年会(2017)
【学会発表】佐々木 数馬, 海津 里佳, 三上 貴司「カリミョウバンの滴下冷却晶析における滴下条件の検討」化学工学会福島大会(2016)
【学会発表】海津 里佳, 齋藤 哲, 三上 貴司「カリミョウバンの滴下冷却晶析における粒径分布挙動」化学工学会群馬大会(2015)
【学会発表】海津 里佳, 三上 貴司「種晶無添加系におけるカリミョウバンの冷却晶析」化学工学会新潟大会(2014)
【学会発表※】T. Mikami and R. Suzuki: Single-jet cooling crystallization of potassium alum, Joint Congress of Asian Crystallization Technology Symposium-2014 & 11 th International Workshop on Crystal Growth of Organic Meterials (2014)
【学会発表※】鈴木 錬, 清野 惠一, 三上 貴司「滴下冷却晶析法を用いたカリミョウバン単分散結晶の創製」 平成25年度東北地区高等専門学校専攻科産学連携シンポジウム(2013)
【学会発表※】三上 貴司, 鈴木 錬「溶質供給操作を基軸とした冷却晶析技術の開発」化学工学会岩手大会(2013)
【学会発表※】三上 貴司, 鈴木 錬「溶質供給操作に基づく新しい冷却晶析法の開発」日本海水学会年会第64年会(2013)
【学会発表※】鈴木 錬, 太田 優輝, 三上 貴司「新しい冷却晶析法に基づく単分散結晶の創製」平成24年度東北地区高等専門学校専攻科産学連携シンポジウム(2013)
【学会発表※】太田 優輝, 鈴木 錬, 三上 貴司「滴下冷却晶析法を用いたカリミョウバン単分散結晶の製造」第15回化学工学会学生発表会(2013)
【学会発表※】鈴木 錬, 太田 優輝, 三上 貴司「カリミョウバンの滴下冷却晶析における滴下流量の影響」化学工学会第44回秋季大会(2012)