新潟大学工学部 晶析工学研究室

反応晶析造粒法の研究


研究概要

 この研究では、晶析工学の知見を粉体工学分野へ応用することを念頭に、粒径制御された結晶造粒物の製法開発を目的としています。結晶製品の製造に反応晶析法や貧溶媒添加晶析法を用いる場合、小粒径の結晶が析出しやすいことから、静電気などの作用で結晶どうしが付着し、結晶の粉がサラサラと流れていかないという問題があります。このことは、装置や配管の内部で結晶の詰まりが生じるもとになります。解決策のひとつに、結晶を大粒径かつ球状にすることが挙げられます。岐阜薬科大学の研究グループは、結晶そのものを大粒径にする代わりに、貧溶媒添加晶析法で生成させた大量の小粒径結晶を液中で寄せ集めて球状の造粒物にする「球形晶析法」(「晶析造粒法」とも言います)を開発しました。この方法の良い所は、粉体流動性の改善(サラサラの粉になる)に加えて、晶析と造粒という、もともと別々の工程を一つの工程にまとめることから、固液分離や乾燥など途中の工程が不要になる点です。
 私たちの研究室では、結晶どうしが寄せ集まってダマができる造粒現象が、分子どうしが寄せ集まって結晶ができる晶析現象とよく似ている点に着目しており、晶析工学の考え方に基づいた結晶造粒物の製造理論について考究しています。液中で起こる造粒現象を晶析現象に置き換えて理解するには、なるべく単純化された実験系である方が望ましいです。この研究では、有機溶媒を必要とする既往の貧溶媒添加晶析法の代わりに、水系で検討可能な反応晶析法を用いる「反応晶析造粒法」の研究を進めています。これまでに、結晶どうしの結合に用いる架橋剤(バインダ)や操作条件を適宜選定することで、ミリメートルサイズの球状造粒物を得ることに成功しています[伊藤2019,堀井2020]。さらには、原料供給管や撹拌翼の取付位置[東條2020]、造粒物間造粒による大粒径化[猪股2020]、ぬれ性評価を用いた架橋剤の定量的な選定指標や造粒物性状の時間挙動[堀井2020]、架橋剤滴径と造粒物粒径の相関性[佐藤2021]、晶析造粒法特有のスケールアップ因子[伊藤2021]、を明らかにしつつあります。

 
図 反応晶析造粒法で得られる安息香酸造粒物[伊藤2019]
と架橋剤液滴の生成挙動解析[佐藤2021]


卒業論文

【修士論文】伊藤 孟徳「反応晶析造粒法の開発とスケールアップの検討」(2021)
【修士論文】堀井 貴裕「反応晶析造粒法を用いた安息香酸造粒物の製造」(2020)
【卒業論文】佐藤 啓太「安息香酸の液中造粒現象に関する基礎的研究」(2021)
【卒業論文】猪股 直司「安息香酸の反応晶析造粒における粒径制御条件の検討」(2020)
【卒業論文】東條 真亜子「安息香酸の反応晶析造粒における供給混合条件の検討」(2020)
【卒業論文】伊藤 孟徳「安息香酸の晶析造粒における造粒操作条件の検討」(2019)

研究業績

【学会発表】三上 貴司, 伊藤 孟徳, 堀井 貴裕「反応晶析造粒法を用いた安息香酸造粒物の製造」化学工学会第52回秋季大会(2022)
【学会発表】伊藤 孟徳, 三上 貴司「安息香酸の反応晶析造粒における操作条件の検討」分離技術会年会(2021)
【学会発表】堀井 貴裕, 三上 貴司「晶析造粒法を用いた安息香酸造粒物の製造」化学工学会第51回秋季大会(2020)