新潟大学工学部 晶析工学研究室

有機反応晶析の研究


研究概要

 この研究では、粒径や形状のそろった小粒径結晶を製造するための晶析操作法と操作設計式の開発を目的としています。工業的な晶析操作では、晶析後の脱水や乾燥が早く済み、かつサラサラと流れやすい大粒径の結晶がふつう望まれます。しかし、結晶製品の用途がプラスチックやゴムの充填剤や医薬品原薬などとなる場合は、むしろ小粒径の結晶が望まれます。小粒径とするには、種結晶ではなく結晶核の自然発生を利用し、かつなるべく大量の結晶核を発生させることが肝要となります。それを実現するための操作法として「反応晶析法」があります。この方法では、2種類の原料溶液を混合して沈殿反応させ、結晶を析出させます。しかし、結晶化の速度が迅速であることから、小粒径結晶同士の凝集が顕著に起こり、粒径や形状などの結晶品質制御はふつう困難です。この改善策として、早稲田大学の研究グループは、写真工業におけるハロゲン化銀微粒子乳剤の製造プロセスで水溶性高分子のゼラチンが用いられていることに着想を得て、水溶性高分子の溶存下で反応晶析を行う「高分子添加法」を開発しました。高分子の溶存下では、高分子の長い炭素鎖が結晶粒子表面を凝集から保護します。また、溶質と高分子がともに電解質の場合は、沈殿反応が起こる前に両者の間で錯体が形成されるため、結晶化速度が緩やかとなり、結晶品質制御が行いやすくなります。
 私たちの研究室では、高分子添加法を有機系へ拡張することを試みています。これまでに、無機系で効果が認められたポリエチレンイミンなどの電解質系の高分子添加剤は有機系ではあまり効果が無く、むしろ無機系であまり効果が認められなかった非電解質系の高分子添加剤に優位性があることを見出しています[三枝2017,松永2018]。さらには、高分子添加剤を晶析槽と原料槽の両方に仕込むことで、操作中の高分子濃度が一定に維持され、品質の安定した結晶製品が得られることを見出しました[伊東2018]


図 高分子溶存下で得られる安息香酸結晶[松永2018]
(左から高分子添加剤無し、ポリエチレンイミン、メチルセルロース)


卒業論文

【修士論文】松永 将輝「高分子添加剤を用いた単分散有機物結晶の反応晶析」(2018)
【卒業論文】伊東 拓己「水溶性高分子添加剤を用いた芳香族系有機反応晶析における添加剤仕込み条件の検討」(2018)
【卒業論文】三枝 由「高分子電解質溶存下における安息香酸の反応晶析」(2017)


研究業績

【学会発表】松永 将輝, 三上 貴司「水溶性高分子溶存下における安息香酸の反応晶析」化学工学会室蘭大会(2018)学生奨励賞受賞